2010年、社会的ブームを起こす実用書が刊行された。『体脂肪計タニタの社員食堂』である。その本を出版したのが、1961年創業の大和書房。『愛と死を見つめて』1963年『ふぞろいの林檎たち』1983年などその時代の代表するベストセラーを世に送りだし、自己啓発書から女性書、教養書、ビジネス書、生活実用書、学参、歴史書、事典まで幅広い出版活動を展開し、『だいわ文庫』の創刊、料理書、就活本と常に新しいジャンルの企画に取り組んでいる。
記憶に新しい『体脂肪計タニタの社員食堂』だが、1冊目が300万部、続編が185万部で合計485万部という大ミリオンセラーとなった。実用書という点では他に例がないだけではなく、出版界においても驚異的な販売部数を記録している。 しかし、この『体脂肪計タニタの社員食堂』の上梓と共に、大和書房では大きな問題を抱えることになった。注文がさばききれなくなったのである。それまでは、1日にせいぜい数千冊から、1万冊という規模の受注処理でよかったものが、多い時には1日に10万部を超える受注を処理しなければならなくなったのだ。 その窮地を救ったのが、Publisher-Plusだった。
Publisher-Plusを導入する前、同社ではオフコン上で専用システムを稼働させていた。 「伝票が来たものを打ち出すということはやれていたんですが、打ち込むまでの集約作業は手作業で集約してから伝票として打ち込んでいました」と営業部 副部長の廣瀬氏はその当時を振り返る。
ただ、「在庫がはっきりわからないので、返品伝票を見て『あるはず』という予想で処理することが多かったです。書いてあるけど実際には無いということは結構ありました」と廣瀬氏。締めてみないとわからない在庫数や、返品データの把握も完全な手打ちだっため、入力するまでには3~4日くらいのロスが発生するという課題を抱えていた。 そうした中で、出版業界に大きな変化の波が押し寄せていた。インターネットの登場によって、出版流通に要求されるスピードが大きく変化し始めていたのだ。同社も例外ではなく、書店の注文に対して1日も早く納入するための工夫が求められ、ついに、既存の専用システムからPublisher-Plusへ切り換える方針を打ち出した。2007年のことである。
Publisher-Plusにより、取次からVAN経由の注文を受けた分に関しては書店様へ3、4日で届けますという流れをつくり、店頭への納品を早めるという第一命題はクリアできた。
「誰でも電話なりFAXなりで注文を受け、その在庫が本当にリアルに見えるようになり(在庫確認に)答えられるようになりました。書籍在庫はあるものの、カバーとか帯といった『つきもの』がなくて出荷できない、というのもわかるようになってとても助かっています」と納入スピードの向上という点だけでなく、業務効率そのものも効率化している点を評価している。 ただ、導入当初はPublisher-Plusの持っているパフォーマンスを充分使い切れている訳ではなかった。出荷から請求書までのシステムを一元化したもの、受注を集約した上で入力するという従来型の業務に合わせてカスタマイズしたため、受注~出荷までの流れが以前のシステムのままになっていたのだ。
「今までの仕事の流れを基本的に変えたくないという意見もあり、今までの業務パターンに合わせて、Publisher-Plusにあってもカスタマイズしてしまいました。」と言う。
2007年にPublisher-Plusを導入したものの、現場では相変わらず集計は手作業でこなし、まとまった数を伝票にする作業が続けられていた。 しかし、Publisher-Plusシステムの真価が発揮される時がきた。それが、『体脂肪計タニタの社員食堂』の大ブームだ。注文件数は爆発的に増え、受注入力を並行して行わなければ出荷が間に合わない状態になったのだ。 その時の状況を廣瀬氏は次のように語る。 「電話もつながらなくなりました。営業の携帯にもかかってきて、営業が外に出られなくなりました。編集者も電話の対応にヘルプに出たりと。(Publisher-Plusは)編集のスタッフでもすぐ入力できるようなインターフェースだったので、対応できたんです。本当にこのシステムがなければ受注を処理しきれませんでした」
それをきっかけに、ここ2年間で同社でのPublisher-Plusの位置付けが大きく変わり、大幅な改修も進んだ。今では本来のPublisher-Plusに戻っているようだと廣瀬氏は振り返った。
「これまで、以前の業務に合わせようとカスタマイズしすぎて、逆に改修が大変になってしまいました。直さなければよかった、最初のままで使っておけばよかったということもあります。これから導入する出版社には、カスタマイズを最小限にしておいたほうがよろしいですよとお伝えしておきたいです(笑)」