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事例1 株式会社ポプラ社 執行役員業務局局長 岳野 保様インタビュー

Publisher-Plusで新次元の出版業務を実現


株式会社 ポプラ社
執行役員 業務局 局長
岳野 保様

 ポプラ社では、1983年頃から、練馬及び三芳の倉庫と本社を専用線でつなぐ、オフコンをベースにした専用システムが稼働していた。当時は、パッケージソフトを各企業向けにカスタマイズする「オフコンシステム」全盛の頃。各社独自の「仕様」にカスタマイズすることで、今では常識となっている、拡張性や汎用性を犠牲にしなければならない時代だった。

「オフコンのデータは加工しなければデータを外へ渡せないという事情がありました。例えば、販売店には、一度データをダウンロードして、CSV(データ受け渡しの汎用フォーマット)などに変換して渡していました。これが、当時は一番手間がかかる作業でしたね。  そうしているうちに、販売店だけではなく、各書店さんにもさまざまな情報を渡さなければいけないというニーズが増えてきたので、オフコンからオープン系にして、だれもがデータを取り出し、簡単に加工できるシステムに変えていく必要性が出てきたんです」(岳野氏)

 90年代に入るとインターネットが普及し、ビジネス取引にもその影響が色濃くなり、それまでシステムの主流だった勘定系だけではなく、業務系にもシステム指向の波が打ち寄せてきた。そうなると、IT化では先行していた同社も、もはやオフコンだけでは対応できなくなり、1998年、「Publisher-Plus」(以下、P-Plus )というオープン系のシステムに全社的に切り替えることを決断した。

 しかし、オフコンからの切り替えに不安がなかった訳ではない。ポプラ社独自の仕様に仕上がっていた専用システムの使い勝手を、はたして P-Plus が実現できるかどうか。同社がP-Plusを導入するに際し、「オフコンデータ資産の完全移行」は当然として、その他にもいくつかの懸念材料があったと、岳野氏は当時を振り返る。

「オフコンにはもともとジョブ管理機能のようなものがついていて、『何時に起動し何時に落ちるか』という機能がありました。たとえば、倉庫に自動的に出荷指示書が流れていくものがあり、その出荷指示書が本当に出たのかというのがオープン系の場合だと、見られなくなってしまうのです。こういった部分をどうするかという課題がありました。  もうひとつの不安要素は、オフコンの場合はオフコン専用の画面で動いていて、バージョンアップはそこのサーバだけ管理していればよかった。ところが、オープン化にしたことによりパソコンに切り替わり、約100台のパソコンを管理しなくてはいけない状況になった。 しかしこうした問題点は、オルトさんが全て解決してくれました」(岳野氏)

出版業界のノウハウを全て凝縮した「Publisher-Plus」

 この「P-Plus」というシステムを一言で表現するなら"ノウハウの凝縮"がぴったりだと岳野さんは言う。ここでのノウハウとは、もちろん出版社の業務のことである。数多くのシステム・パッケージがある中で、出版社の業務をこれほどまでに研究されたものは少なく、かゆいところに手が届く、使いやすいシステムだと、同社は評価している。

「販売部は書店からの電話やFAX、または販売店からの注文をシステムへ入力します。そのとき、システムが示すある数値を確認しながら作業を行うのです。  確認する数値の1つ目は、出荷可能数です。出荷可能数とは、すぐに出荷できる在庫数のことで、良品在庫数から出荷引き当てされた部数を差し引いたものとなっています。これにより、すぐ出荷できる部数を知ることができます。

 2つ目の数値が、改装可能数といい返品在庫に対して、改装率と付き物在庫数を考慮した比較的早く出荷できる部数です。書店からの電話を受けながら画面で確認できるのが最高です。  そして3つ目が、重版中の部数と出来日となります。これらの情報が、書店への正確な納入時期を回答することを実現しています。販売の機会損失を最小限に抑えられていると思います」(岳野氏)

 このように受注を入力し出荷引き当てをするというシステムのルールを利用することで、ベテラン社員に偏っていた作業を分散することに成功しているのだ。これは、人から人へと膨大な時間をかけて、出版業界で伝承されてきたノウハウが P-Plus の中に取り入れられているからに他ならない。つまり、複数の出版社の叡智をバランスよく取り込んだ結果だ。言い換えれば、各社の良いとこ取りして作られたシステムとも言えるだろう。

 同社では、P-Plusのフル機能を導入しているため、編集部や製作部でも同じシステムを活用している。編集部では企画入力を行い、製作部と協力して入稿から印刷、製本までの進行管理を行っているという。その情報を販売部などの各部門に公開しているので、適切な販売戦略につなげることができるのも特筆すべき点だろう。  さらに、同社は、P-Plusの持つ拡張性をフルに活用し、業務の効率化をさらに進化させている。その1つの例が09年に導入した「製作システム」に見ることができる。

「製作部から仕入れ先(印刷所・製本所など)各社へ見積もりの依頼を出します。仕入れ先各社からは、弊社が提供するWEB画面を使って見積もりを提出してもらいます。製作部は、提出された台割りや単価・金額をチェックして発注を行います。これらのキャッチボールは、全てシステムからメールにて通知されるようになっているのがありがたいですね。  そして、ここで発注した金額を支払い機能や原価機能へ連動するところがポイントです。再入力する手間を省略できるので、迅速で正確な原価計算を実現できました。原価が見えると単品ごとの損益管理が素早くできるようになり、非常に助かっています。台割りとか、そういったところも印刷所に見ていただいて請求業務へつなげる。当然、付け合わせ印刷もその中で設定できるようにしてある」(岳野氏)

出版社の商品開発のパートナー

 こうした製作システムのような発想は、以前からニーズはあったのだが、使い勝手が良くなければ社外の協力会社にも利用してもらえないため、実現を見送って来た経緯があった。そこにオルトの改善提案があり、協力会社にも使いやすい「エクセル」のようなインターフェースに改良することで、製作システムの実現に踏み切ることができたと言う。

 また、出版業界は、一般的な「ものづくり」業界とは異なり、企画から商品化にいたるまでに多くの仕様変更が日常的に行われている。商品管理をサポートするシステムも、パッケージ(ソフト)のように硬直的だと何もできなくなってしまう。しかし、そうした状況に対応できるシステムおよびシステム開発会社は多くはないのが実情だろう。しかし、同社の場合は違った。

「幸いにも、仕組みはある程度自在に変えてもらうことができました。今回、ムックをやりますよ、雑誌もやりますよとかいった複雑な仕様に対しても、請求処理まで含めてある程度容易に対応できるように変更してもらえたということも大きな特徴ですね。この仕組みに切り替えることで、いろんなことにチャレンジできる環境ができました。

 こちらからの無理な要望を真剣に聞いてくれて、さまざまな面でベストな対応をしていただいています。ベストな対応とは、何がやりたいのかをよく理解した上で、いくつかの選択肢を提案してくれることです。今までの既成概念にとらわれがちな我々に一石を投じてくれるのです。そうした検討を重ねてカスタマイズしてきました。

 もう1つ開発者の顔が見えるのがうれしいです。皆さん情熱的で技術力が高い印象が残っています。そうした開発者と利用者の直接的なコミュニケーションにより、生きたノウハウが蓄積できているのだと思います」(岳野氏)

 いま、出版社は非常に厳しい状況におかれている。そうした状況の中にありながら、「P-Plus」という"ノウハウの凝縮"したシステムとオルトという開発パートナーとともに、新たな道を切り拓いているのが、現在のポプラ社の姿のようにも見える。

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